はらぱんの日記

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眠れる宇宙の美少年、お姫様に起こされる~『エヴァQ』の感想、その1~

最近、『新劇場版エヴァ』序破Qが、三週連続金曜ロードショーで放映されていました。

はらぱんは劇場公開当時、映画館で『Q』を2回見ています。今回の三週連続放送をきっかけにもう1回『Q』を見なおしたんですが、最初に見たときとは大きく異る感想をもちました。今日はそれを書いておきたいと思います。

 

最初に劇場で『Q』を見たとき、「あれっ、もとの『エヴァ』に戻ったのかな」と思いました。1995年放映開始のTV版『エヴァ』のように、『Q』では主人公の碇シンジが正統派ヒーローではなくなっていたからです。

 

『序』と『破』では、シンジが綾波レイを守るヒーローに成長していく過程が明確に描かれていました。『序』の最後は、レイとシンジが協力して使徒を撃退するヤシマ作戦の場面でした。使徒の攻撃に対してレイが盾となってシンジを守り、その間にシンジは使徒を狙撃し破壊します。ミッションをなんとかやり遂げた後、シンジは負傷したレイをエントリープラグの中から助け出し、二人の心が通い合う場面が描かれていました。『破』はこの続きになっています。物語の最後で、レイはシンジのために使徒に立ち向かいますが、使徒に喰われてその中に取り込まれてしまいます。そこでシンジは、レイを取り返したいという一心でエヴァに乗って使徒に立ち向かい、その願いを叶えます。

 

こんなふうに、『序』と『破』それぞれの物語の終盤できちんとクライマックスとカタルシスが設けられているだけでなく、両者を合わせて一つの見事な成長物語になっています。しかもこれが美しい映像で表現されており、新劇場版エヴァは見事なエンターテインメント作品になっていました。

 

ところが!です。せっかく『序』と『破』で正統派エンタメ作品に作り変えたのに、『Q』ではまたもとのTV版『エヴァ』に戻っているではないか!というわけです。せっかくレイを取り戻してヒーローになったかと思いきや、そのせいで我知らずサードインパクトを引き起こしかけてしまって、人々の反感を買っているシンジくん。。。しかも、14年間初号機の中に溶けていた彼は、その間に起こったことを全く知らないだけでなく、誰も説明してくれない。そしてそのせいで、フォースインパクトを起こしかけてしまうという。。。誰かちゃんと諸々説明してあげようよ!ってかんじです(笑)こんなふうに、『Q』におけるシンジは、主体性が全然ないキャラとして描かれているんですよね。

 

ちなみに、はらぱん的には、シンジくんがウジウジメソメソしているTV版『エヴァ』も大好きです。しかし、新劇場版の価値はTV版とは反対方向に物語を展開させて、ヒーローになるシンジを描くことにあったはずです。だから、『Q』でTV版と同じ路線に戻るとなれば、絵がきれいになったという点以外に、新しい『エヴァ』の価値って一体何なの?という疑問が当然湧いてきます。

 

確かに、そんなふうに『序』と『破』で築き上げたものをひっくり返して、視聴者に疑問(Question)を抱かせる役割をこそ、『Q』は担っていたのであると考えることもできるでしょう。その場合、『Q』を評価するために、わたしたちは次作を待つ以外にないわけです。次作が公開されるまで、視聴者は無数の疑問を抱き続けることになる。

 

しかぁし!!

今改めて『Q』を見返してみたところ、上記とは全く別の感想を抱きました。つまり、『Q』はそれ自体で完結した作品で、TV版とも違う価値をもっていると思えてきたんですね。

 

結論をいうと、『Q』の中心にいるのは、シンジじゃなくてアスカなんです。

アスカがシンジを取り返しに行く物語なんです。

ちょうど『破』でシンジがレイを取り返しに行ったように。

 

ただし、『Q』がとても面白いのは、第一に、お姫様が王子様を起こしに行く物語になっている点ですよね。『眠れる森の美女』がそうですが、「白馬に乗った王子様が眠れるお姫様のもとへやってくる」というのがよくある物語パターンです。ところが、『Q』ではそれが逆になっているわけです。眠れる宇宙の美少年が、赤馬(弐号機)に乗ったお姫様に起こされる。

 

そしてもう一点。『Q』におけるアスカは、チーム・プレーに徹していることです。彼女はミサトが新たに立ち上げた組織「ヴィレ」の一員として、ちゃんと任務を遂行しているんです。物語はアスカに焦点化しているんだけど、彼女は単独プレーをしているわけではない。彼女は「ひとりじゃない」のです。

 

長くなってしまったので、つづきはまたあとで書きます。